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 バンコクの友達の家で、それはそれはきれいな真紅の飲み物を出されたことがあります。タイ語でガチャップ。よくよく聞けばハイビスカスのお茶で、タイではゼリーのようなお菓子に使うことが多いとか。ほんのり酸っぱくてさわやかで、まったく渋味のないところが気に入り、市場で買って帰りました。

 お茶といってもジャスミン茶のように茶葉に花を混ぜたものではなく、まさに花のみ(正しくは萼ですが)。あの大輪のハイビスカスがこれ?と思うほど赤黒くひからびて、一輪が3cmくらいに縮まっています。不安を覚えつつ煮出してみると、あの感動的に鮮やかな真紅がよみがえりました。暑い日に氷を入れてお客様に出すと、美しさもさることながらクセがなくて飲みやすいと評判は上々。トロピカルジュースやお酒で割ったり、ココナッツミルクと層にしてゼリーにしたりと活躍しています。

 ハーブティーの本によると、ハイビスカスに含まれるクエン酸は喉の炎症を鎮め、カリウムはむくみに効果があるそうですから、おしゃべりでかつお茶好きの私にはぴったりとわかりました。

 私は夏に限って明け方に起きる習慣があり、ベランダのハーブを摘んで朝のお茶を入れます。といっても、茂りすぎた葉や花を摘むだけのこと。ミントが伸びすぎていたら、押し込むほどの量をポットに詰めてアラブ風ミントティーにすると、一口で頭が覚醒します。さわやか系のレモングラスやいやし系のカモミールはストレートで、個性派のタイムやローズマリー、セージはほんの少しを紅茶の葉に混ぜてみてください。あれこれ混ぜすぎてゲッとなることもありますが、こんなお天気まかせのブレンドも朝の楽しみのひとつ。

 私の試してみたフレッシュハーブティーのヒットは、柑橘類の葉っぱ。タイではバイマックルーというこぶミカンの葉をトムヤムクン(スープ)やカレーの風味づけに使いますが、この香りが滅法いいんです。えもいわれぬほど心地よく爽快な香りで、たぶん天国とか浄土とかいう場所はこんな匂いがするに違いない、と私はふんでいます。ともあれ、バイマックルーでお茶をいれたら目論味どおり、なんていい香り→同じ柑橘類だから、うちの鉢植えのレモンの葉でもいいんじゃない?→やっぱ、おいしい!となったのです。以来、さわやか系のブレンドにはベランダのレモンが欠かせない存在となりました。

 葉を数ヵ所ちぎってからポットに入れ、熱湯を注いで3~5分待つと、きれいな薄緑色に浸出します。葉の香りよりは淡いけれど、ほんのりレモンが香るさわやかなお茶です。バイマックルーにならって、スープやデザートの香りづけにも役立っています。おそらく、夏みかんでも伊予かんでもいいと思います。庭木の柑橘類の葉っぱで試してみてはいかがでしょうか。

 私はマンション住まいなので、年に数回植栽の消毒が実施されます。大切なレモンの木に消毒薬をかけられたら…と思うと心配で、その日は外出を控えて植木屋さんを待ち構えます。鼻息荒く「食用なので絶対にかけないでください」と頼むと、「実がなっていないのにかい」と聞かれたので、「葉っぱを食べています」と答えると怪訝な表情をされました。

 実は私のレモンの葉活用法はお茶や料理以外にもあります。ぐったりと疲れたときや気持ちがささくれ立っているときに、この匂いをかぐと気分がやすらぐのです。アロマテラピー効果なのでしょう。それにしても、薄暗いベランダで葉っぱをちぎって無心に匂いをかいでいる姿は、ちょっと人には見せられません。

(文 / 野澤幸代)   

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