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 イスタンブールの絨毯屋では決まってチャイが出されます。「ちらっと見るだけだから」と断っても、そこは商売上手のバザール商人。チャイハネ(茶店)の少年が銀の盆に持ち手のついた岡持ちを提げてやって来るのに、そう時間はかかりません。銀の茶托に高さ8cmほどのグラスが置かれ、紅茶が注がれます。トルコの紅茶は濃く煮出したものを湯で薄めて飲みます。赤みの強い鮮やかな色でほのかに甘い香りがし、濃いのに渋みが少ないので何杯でも飲めるおいしい紅茶です。

 ミルクは入れませんが、トルコ人の入れる角砂糖の量たるや、甘いもの好きの私でもあきれるくらいなのです。私がカウントした第1位は、7個も入れたおじいさん。角砂糖のてっぺんが紅茶から顔を出すまで積み上げて、おもむろにスプーンでかき混ぜます。たった100mlの紅茶ですから当然飽和状態になり、溶けきらない砂糖が底に厚く溜まります。話をしながら次々とお代わりをして、角砂糖をどんどん入れて……。トルコに限らず、どうもイスラム圏の人たちは甘党のようです。紅茶やお菓子はとてつもなく甘く、加えて男性たちは煙草好き。たぶん、アルコールを飲まないことが他の嗜好品に走らせるのかも。

 さて、シルクロードの終着点と呼ばれるトルコには、ヨーロッパよりも一足先に、15世紀に中国からお茶が伝わっていたそうです。では、ヨーロッパに渡った最初のお茶ももちろん中国のお茶? 意外なことにそれは、1610年に平戸からアムステルダムへと海路で運ばれた日本茶だったとか。その後、東洋趣味の流行とともにフランスやイギリスへとお茶が広まっていきました。

 ちなみに陸上ルートで西へ伝わったお茶はトルコやロシアのように煮出し法なのに対して、海上ルートでもたらされたお茶は湯を注いで待つ浸出法という違いがあります。お茶の淹れ方から、その昔に辿ってきた道のりがわかるなんて素敵ですね。

 中国茶の分類でいうと全発酵茶である紅茶は、その後、イギリスで愛飲されるようになり、アフタヌーンティーなどの英国紅茶文化が花開きました。というのも、イギリスの硬水には発酵度の高いお茶が適し、また、ワインやビールのような自国産の安価な飲みものがないこともあって、紅茶が広く受け入れられたのだそうです。英国式の紅茶の淹れ方では浸出時間が4~5分ですが、これは硬水の場合。日本は軟水ですから、より短い時間でよいわけです。では、おいしい紅茶の淹れ方をおさらいしましょう。

1 くみたての水を沸騰させ、ポットとカップを温める。

2 ポットの湯を捨て、茶葉小さじ中盛り1杯を人数分+1杯入れ、沸騰湯を注ぐ。

3 ポットのふたをし、あれば保温のためにティーコゼーをかぶせ、3分おく。細かな茶葉は浸出時間を短めにし、ダージリンなどの大きな葉は5分ほど浸出させる。

4 ポット内をスプーンでかき混ぜ、カップの湯を捨て、ストレーナーを通して注ぐ。

 くみおきの水や長く沸騰させた湯は、水に溶け込んでいる酸素が少なくなるため、必ずくみたて、沸騰したてを使います。

 私はアールグレイが好きで、いつも大きなカップでたっぷり飲みます。なーんにも考えないでぼんやりする時間。ベルガモット(柑橘類)の香りが気分をなごませ、新たな元気を与えてくれます。

(文 / 野澤幸代)   

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